2019年の読書メーター

2019年の読書メーター
読んだ本の数:49
読んだページ数:11915
ナイス数:501

形而上学入門 (平凡社ライブラリー)形而上学入門 (平凡社ライブラリー)感想
「存在」の語源を遡ってみたり、ギリシア人の思想や詩を丹念に検証してみたり、存在を生成、仮象、思考などと差別化してみたり、周りを囲いこんで犯人を追い詰めるかのように「存在の問い」を突き詰めていく。しかし本編よりも付録の対談の方が面白い。
読了日:12月31日 著者:マルティン ハイデッガー
息吹息吹感想
待望の新刊は作者の幅の広さを見せつけられた。「偽りのない事実、偽りのない気持ち」「不安は自由のめまい」が特によかった。現代人が当たり前だと思い込んでいることが、この本を読むことで揺らいでくる。読み終わった後でもジワジワと読者を侵食するあたりが非常にヤバい。
読了日:12月28日 著者:テッド・チャン
実存主義とは何か実存主義とは何か感想
実存主義についての講演録および文学作品を収録。マルクス主義者の猛烈な批判に対して我慢強く抗議するサルトルに「お疲れさま」と言いたくなる。『顔』という掌編はサルトル独特の粘体感が現象学的手法で書き殴られており、クオリティの高さを見せつけている。
読了日:12月14日 著者:J‐P・サルトル
ハイデガーの思想 (岩波新書)ハイデガーの思想 (岩波新書)感想
木田氏お得意のミステリー仕立ての語り口で「ハイデガーのどこがすごいのか」について丁寧に解説してくれる。難易度高めだがじっくり読めば何とか理解できなくもないレベル。ただ「紙幅の都合で割愛」と随所で漏らしており、氏にとって新書の分量は余程窮屈だったと見える。
読了日:12月10日 著者:木田 元
ユダヤ人 (岩波新書)ユダヤ人 (岩波新書)感想
「シチュアシオン」の観点からユダヤ人を分析・定義し、反ユダヤ主義の矛盾をこれでもかと炙り出す。昨今のヘイトスピーチなどの人種問題に通じる部分は大いにあると思う。ただ最後の最後で意外な結論に繋がっていくので「そうきたか」と意表を突かれた感は否めない。
読了日:11月27日 著者:J‐P. サルトル
水いらず (新潮文庫)水いらず (新潮文庫)感想
短編集。全体的に嘔吐よりも読みやすく「小説家サルトル」の才能が遺憾なく発揮されている。解説で絶賛されていた「壁」よりも表題作の「水いらず」や「一指導者の幼年時代」が個人的には好き。どの短編にも、読者を物語へ即座に引き込むパワーが宿っているように思う。
読了日:11月26日 著者:サルトル
嘔吐嘔吐感想
自身の思想を小説というフォーマットに結晶化し得たという点でサルトルは他の思想家とは一線を画している。ドラマチックな展開は無いが一文一文が短いせいか、後半へ進むにつれて文章がリズミカルになっていく。読んでいるうちにジワジワと物語に侵食されていくような感覚。
読了日:11月14日 著者:J‐P・サルトル
90分でわかるニーチェ90分でわかるニーチェ感想
90分は言い過ぎだけど、思想の解説というよりはむしろ伝記的でコミカルな記述が多く、ページ数も少ないので比較的読みやすい。ニーチェの著作を読んでみたくなる内容なので「新書」→「文庫」というステップの前段階として適していると思う。散歩は大事。
読了日:11月07日 著者:ポール ストラザーン
サルトル/メルロ=ポンティ往復書簡―決裂の証言 (みすずライブラリー)サルトル/メルロ=ポンティ往復書簡―決裂の証言 (みすずライブラリー)感想
即断即決即行動的なサルトルと沈思黙考慎重派のメルロポンティの二人が、アンガジュマンについての意見の相違から決別に至る過程が記録された三通の手紙。二人の偉大な思想家の胸の内が痛いほどに伝わってくる。今や滅び行く「手紙」というメディアの熱量を感じられる一冊。
読了日:11月01日 著者:J.‐P. サルトル,M. メルロ=ポンティ
「いき」の構造「いき」の構造感想
青空文庫Kindle版。「事象そのものを見る」という現象学的手法を用いて日本特有の文化である「いき」の定義を試みている。随所で引用される一昔前の日本語(俳句や都々逸)の流れるような趣きが印象的。現代において「いき」の感覚は絶滅の危機に瀕しているので、天然記念物並みに保護した方がいいと思う。
読了日:10月29日 著者:九鬼 周造
哲学のモノサシ哲学のモノサシ感想
身近な疑問と近代以降の大物思想家の主張を関連付けて、噛み砕いて解説してくれる。現象学(フッサール)推しな感じが伝わってきたが、ニーチェヘーゲルをちゃんと読んでみたくなった一冊。これを読んでから竹田青嗣の『現代思想の冒険』を読むと順序的に良いと思う。
読了日:10月23日 著者:西 研
デカルト哲学についてデカルト哲学について感想
青空文庫(Kindle)。デカルトを始めとする近代思想の大御所(スピノザ、カント、ヘーゲルなど)がとった手法について偏りなく冷静な分析・批評を行っている。西洋・東洋の比較や仏教とのつながりについての考察は、日本人哲学者ならではだと思う。難しいけど読み進めたくなる。
読了日:10月23日 著者:西田 幾多郎
精神指導の規則 (岩波文庫 青 613-4)精神指導の規則 (岩波文庫 青 613-4)感想
プロトタイプ方法叙説とでも言うべき濃密な内容で、規則第十二までの展開はまさに圧巻だが、後半なぜか突然図解つきの算数教室が始まる。古きよき日本語の訳文が意外とマッチしているが、生徒指導室の怖い先生が出てきそうなタイトルは何とかした方が良いと思う。
読了日:10月18日 著者:デカルト
省察 (ちくま学芸文庫)省察 (ちくま学芸文庫)感想
デカルト本人の六日間に渡る独り言シリーズよりも、訳者によるQ&A形式の解説が初心者向けで理解しやすく、本文はオマケでむしろこっちだけ読めばいいんじゃね?と思ったり。特に近代以降の思想家にデカルトがどう読まれてきたか、という部分がとても興味深かった。
読了日:10月10日 著者:ルネ デカルト
メルロ=ポンティ 触発する思想 (哲学の現代を読む)メルロ=ポンティ 触発する思想 (哲学の現代を読む)感想
図書館本。メルロポンティの主要著書を年代順に解説。同時代の思想家たちとの小ネタ的なエピソードを随所に挟みながら、メルロポンティが言わんとしていたことについて噛み砕いた表現で教えてくれる。著者はお喋り好きで人の良いおっさんという印象。
読了日:10月08日 著者:加賀野井 秀一
知覚の哲学: ラジオ講演1948年 (ちくま学芸文庫)知覚の哲学: ラジオ講演1948年 (ちくま学芸文庫)感想
実際のラジオ講演のページ数に対して、その約5倍の量の訳者による注釈という特殊な構成だが、講演で容赦なくすっ飛ばされたメルロポンティの思考プロセスを、漫才のツッコミの如く一つ一つ拾ってくれたおかげで理解の一助となったことは確かだと思う。
読了日:09月30日 著者:モーリス メルロ=ポンティ
現象学 (岩波新書 青版 C-11)現象学 (岩波新書 青版 C-11)感想
分からなさ過ぎてリベンジ!ということで再読。メルロ=ポンティ関連の入門書を拾い読みしながら読んだら、ゲシュタルト云々については何となく分かった気がする。フッサールメルロ=ポンティについては引き続き掘り下げてみたくなった。本書ではハイデガーの扱いがアッサリし過ぎていたので、別途「ハイデガーの思想」を入手したので読む予定。
読了日:09月20日 著者:木田 元
サルトル (ちくま学芸文庫)サルトル (ちくま学芸文庫)感想
サルトルのイラスト入り入門書。主要著書に基づいて、思想の推移を具体例とともに分かりやすく解説するのが目的だと思うが、説明の粒度が荒く全体的に雑な印象は否めない。でも読者に興味を持たせるという点ではギリギリ成功している気がする。
読了日:09月16日 著者:ドナルド・D. パルマー
情念論 (岩波文庫)情念論 (岩波文庫)感想
精神と身体の相互作用について、あらゆる感情を列挙して説明を加えた上で「情念」そのものを肯定する、みたいな内容。第1部は「精気」云々の解説にウンザリしてしまい、結構しんどかった。情念オタクなデカルトを身近に感じられる1冊だが、あまりおススメはしません。
読了日:09月15日 著者:デカルト
生物から見た世界 (岩波文庫)生物から見た世界 (岩波文庫)感想
ダニやハエ、ゾウリムシやウニなどの視点で世界はどのように捉えられているか、豊富な挿し絵と共に詳しく説明されており、生物の「目的」ではなく「設計」が重視されている。難しい用語が随所に出てくるものの、カタツムリの気持ちになれる貴重な一冊。
読了日:09月02日 著者:ユクスキュル,クリサート
哲学原理 (岩波文庫 青 613-3)哲学原理 (岩波文庫 青 613-3)感想
第一部は神の存在証明、思惟の定義など「懐疑屋デカルト」たる堂々の内容だが、第二部の途中「延長→運動」のあたりから雲行きが怪しくなり、終盤はほぼ流し読みだった。序文の「仏訳者への書簡」はなかなか侮れない内容。時代を感じさせる訳文(1964年発行)。
読了日:08月31日 著者:デカルト
ベルクソンの科学論 (1979年) (中公文庫)ベルクソンの科学論 (1979年) (中公文庫)感想
科学と哲学の関係がテーマのベルクソン入門書。中でも『物質と記憶』の解説が分かりやすい。中公文庫の『アンリ・ベルクソン』よりも堅めな内容で著者の主張が前面に出ている本ではないが、具体例を豊富に示してくれるので読者としては非常にありがたい。絶版になっているようだが勿体ないと思う。
読了日:08月23日 著者:沢瀉 久敬
方法序説 (岩波文庫)方法序説 (岩波文庫)感想
3部までは自己啓発っぽいが4部から本気を出している。なるほどだから「方法」序説なのねと納得がいった。壮大な物語の幕開け的な雰囲気を感じる一冊。正義感溢れるあまり歯に衣きせぬ毒舌家なデカルトのキャラクターが印象に残った。翻訳の程よいくだけ具合が良し。
読了日:08月20日 著者:デカルト
アンリ・ベルクソン (中公文庫)アンリ・ベルクソン (中公文庫)感想
「時間」「動き」「直観」などの要注意ワードを豊富な具体例(賀茂川漱石など)と共にかみくだかれた文章で解説してくれるのでベルクソン理解の参考になった。各章で解説している内容の重複が多々見られるが、読者的には覚えやすいという利点もあり。
読了日:08月14日 著者:沢瀉 久敬
アメリカ紀行アメリカ紀行感想
お気楽な旅行記かと思いきや、アメリカという異物に対して著者がどのような反応を示したかという一種の観察日記のような趣きがあった。滞在が終盤に近づくにつれて考察・分析・連想が徐々に鋭くなっていくが、唐突に間に挟まれる俳句(夏目漱石を意識?)が味わい深かった。
読了日:08月12日 著者:千葉 雅也
ブロディーの報告書 (白水Uブックス (53))ブロディーの報告書 (白水Uブックス (53))感想
ガウチョや学者、未亡人、宣教師などが登場する短編集。ラテンアメリカの乾いた空気の中で淡々と物語は進行していく。中でも衝撃的だったのは「マルコ福音書」「ブロディーの報告書」の二作。SFとは一味違った非日常感が味わえる。
読了日:08月04日 著者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス
女ごころ (ちくま文庫)女ごころ (ちくま文庫)感想
フィレンツェを舞台にした大人の恋愛モノだが、モームらしい発想は随所に見受けられるものの、スムーズに事が運びすぎる感があって全体的に惜しい印象が残った。短編や長編とは異なり、スパイスの効いた中編小説を作るのはなかなか難しいのかもしれない。
読了日:08月01日 著者:W・サマセット モーム
社会的共通資本 (岩波新書)社会的共通資本 (岩波新書)感想
市場経済の原理に振り回されることなく、持続可能な社会・環境を作るためにはどうすればよいか、経済学の観点から論じられた一冊。19年前に出版された本だが、現在の日本の状況を予見して警鐘を鳴らしているように思われる。クルマ社会、学校教育のくだりが秀逸。‬
読了日:07月31日 著者:宇沢 弘文
灯台へ (岩波文庫)灯台へ (岩波文庫)感想
約400頁の長編だが、さほど長さを感じなかったのは「意識の流れ」の手法がくどすぎず、且つ「女性」や「芸術」などの要素が絶妙なバランスで物語を成り立たせていたからだと思う。今まで読んだウルフ作品の中では一番好み。「静けさ」が印象に残る作品。
読了日:07月28日 著者:ヴァージニア ウルフ
現象学 (岩波新書 青版 C-11)現象学 (岩波新書 青版 C-11)感想
1970年発行、初心者向けの入門書かと思いきや、新書とは思えないハードな内容。これ1冊で何かが分かったかというとほぼ何も分かってないに等しいので、次のステップの書物を読む必要がある。フッサールハイデガー、及びサルトルメルロ=ポンティの確執の描写は木田氏ならではだと思う。
読了日:07月18日 著者:木田 元
戦乱と民衆 (講談社現代新書)戦乱と民衆 (講談社現代新書)感想
一般市民と戦争についてのシンポジウムを元にした内容だが、感情的に語られがちな「戦争」というテーマについて、専門家が史実をもとに考察することは意義があると感じた。都市の文化的価値が終戦のタイミングを左右するという話も興味深かった。
読了日:07月11日 著者:磯田 道史,倉本 一宏,フレデリック・クレインス,呉座 勇一
キリスト教の歴史 (講談社学術文庫)キリスト教の歴史 (講談社学術文庫)感想
内容が堅そうで数年積んでいたが、読み始めると思ったより読みやすく、キリスト教と思想との関係について大まかな流れを把握することが出来た。歴史的事実の解説のみにとどまることなく、随所に著者の所感が顔を覗かせるところが人間味があって良い。
読了日:07月06日 著者:小田垣 雅也
素粒子 (ちくま文庫)素粒子 (ちくま文庫)感想
冴えないおっさんの変態日記と見せかけて、実は想像を絶するスケールの物語。神なき後の世界において究極の最適化へと突き進む描写はリアルすぎるあまりフィクションとは思えず。人類はいつまで性欲の奴隷のままなのか。伊藤計劃とか好きな人はハマるかもしれない。
読了日:06月26日 著者:ミシェル ウエルベック
道徳と宗教の二つの源泉〈1〉 (中公クラシックス)道徳と宗教の二つの源泉〈1〉 (中公クラシックス)
読了日:06月19日 著者:ベルクソン
道徳と宗教の二つの源泉〈2〉 (中公クラシックス)道徳と宗教の二つの源泉〈2〉 (中公クラシックス)感想
多角的なアプローチで宗教について論じられており、直観や持続などの単語は影を潜めているがラスト5ページの怒涛の展開はまさに圧巻。ベルクソンの器のデカさを見せつけてくれる。哲学という枠を超えて人間が向かうべき方向を分析した名著。
読了日:06月19日 著者:ベルクソン
大転落 (岩波文庫)大転落 (岩波文庫)感想
数々の理不尽な災難に見舞われた主人公の物語で、きっとパブリックスクールや学校教師、牧師や身分社会などに対する諷刺が込められてるんだろうけど知識不足のためあまり理解できず。個性豊かな脇役に比べて主人公のキャラがいまいち明確でなかったところが残念。
読了日:06月18日 著者:イーヴリン・ウォー
もたない男 (新潮文庫)もたない男 (新潮文庫)感想
ものを捨てることに異常なまでの執着を見せる著者(漫画家)の生きざまが淡々としたトーンで綴られている。物に依存したくないという思いが強すぎるあまり、何かを所有することに対して嫌悪感を持ってしまうのではないか。モノとの関係を考え直すきっかけになる一冊。
読了日:06月14日 著者:中崎 タツヤ
弱いつながり 検索ワードを探す旅弱いつながり 検索ワードを探す旅感想
環境を変えないと見えないもの、「観光」という考え方、検索ワード自体をどう探すか、ネットとの接し方、偶然性を楽しむ、などについて。自分の日常を振り返ると耳が痛い箇所も多々あり。サクッと読める割には示唆に富む良書。東氏の他の著作も読んでみたくなった。
読了日:06月05日 著者:東 浩紀
多読術 (ちくまプリマー新書)多読術 (ちくまプリマー新書)感想
読書術的な本は基本的に胡散臭いと思っているので軽い気持ちで読み始めたところ、なかなか奥深い内容で一気に読み終えた。本のポテンシャルを最大限に引き出す読み方はなるほどと思うところもあり「本が好きでしょうがないおっちゃん」感丸出しな語り口も楽しめたので、本好きな人は読んで損はないと思う。
読了日:05月22日 著者:松岡 正剛
思想と動くもの (岩波文庫)思想と動くもの (岩波文庫)感想
論文・講演を集めたもので「精神のエネルギー」よりも読み応えあり。直観についての考察に多くの頁が割かれており「時間と自由」の副読本的な内容。時おり文章中に表れる哲学探究へのパッションは、ベルクソンに対するイメージを大幅に変えてくれた。
読了日:05月18日 著者:ベルクソン
メイキング・オブ・勉強の哲学メイキング・オブ・勉強の哲学感想
「勉強の哲学」の発想から執筆までの経過を惜しげもなく披露しており「勉強の哲学」と必ずセットで読むべき。デジタルと併せて手書きノートを有効活用しているところが意外で,マネしたくなった。分析の徹底ぶりを見る限り、著者はドS且つドMだと思う。
読了日:05月15日 著者:千葉 雅也
ボルヘス怪奇譚集 (河出文庫)ボルヘス怪奇譚集 (河出文庫)感想
長くても3,4ページ、短いものは数行で終わってしまうボルヘスセレクションによる古今東西の物語が多数収録されている。教訓めいた話もあれば、何の脈絡もないまるで交通事故のような話もあり。一話一話が短いのでチビチビ読むのに適していると思う。
読了日:04月26日 著者: 
時間と自由 (岩波文庫)時間と自由 (岩波文庫)感想
三週間かけて読了。空間と時間を「持続」の概念を用いて緻密に定義している。特に「自由」についてのくだりは、十九世紀に書かれたにもかかわらず現代にも応用できると思う。ガチ理系ならではの分析力は若干しつこすぎるものの、他の哲学者とは一線を画している。
読了日:04月18日 著者:ベルクソン
これはペンです (新潮文庫)これはペンです (新潮文庫)感想
二篇の中篇作品が収録されており、表題作よりも「よい夜を持っている」が好みだった。無限の記憶という発想はボルヘスの幻想世界を彷彿とさせるが、人間臭さが究極まで排除された物語の中に微かに垣間見える叙情性が印象に残った。
読了日:04月03日 著者:円城 塔
精神のエネルギー (平凡社ライブラリー)精神のエネルギー (平凡社ライブラリー)感想
物質と記憶は約一ヶ月を要したが、こちらは二週間弱で読み終えた。具体的事例にベルクソンの理論を紐付けているので、比較的ポップな仕上がりになっているのでオススメだが、後半「図式」や観念論・実在論等が出てくると理解が追い付かず。
読了日:03月28日 著者:アンリ ベルクソン
舞姫 (青空文庫POD)舞姫 (青空文庫POD)感想
独特な文体ゆえに敬遠していたが、読み始めるとあまり気にならなくなった。自伝的な要素もあり主人公の葛藤のビシビシ伝わってくる。読者を容赦なく突き放す傑作。
読了日:03月15日 著者:森 鴎外
物質と記憶 (ちくま学芸文庫)物質と記憶 (ちくま学芸文庫)感想
通読に一ヶ月ちょっと要した。ガチの哲学かと思いきや、病理学や心理学などを巻き込んだ学際的な研究スタンスなので、逆に理系の専門家はこの本をどのように読むのか気になる。抽象概念を弄ぶのではなく人間の意識や行動に焦点が当てられている。難解だが傲慢さは感じられず、ひたすらクソ真面目なオッサンという印象。イメージ図がもっと豊富だと理解の助けになるので誰か作って欲しい。
読了日:03月07日 著者:アンリ ベルクソン
亡霊のジレンマ ―思弁的唯物論の展開―亡霊のジレンマ ―思弁的唯物論の展開―感想
現在二周目中。偶然性について書かれた「Ⅱ潜勢力と潜在性」は言わんとしていることが辛うじてぼんやり分かったが、他の章、特に最終章はほぼ理解不能。今日と地続きの明日が来る保障はどこにもなく、人間の勝手なご都合主義の矛盾を暴いていくさまが痛快だった。タイトル作の「Ⅲ亡霊のジレンマ」は前章の考え方を基に「神の不在」について議論されているが、亡霊というよりもむしろ神のほうにスポットが当てられているので、章のタイトルは原題(来るべき喪、来るべき神)のままで良かったのでは?と思ったりした。
読了日:01月31日 著者:カンタン・メイヤスー,千葉雅也
思弁的実在論と現代について: 千葉雅也対談集思弁的実在論と現代について: 千葉雅也対談集感想
対談集だが専門用語の嵐で骨が折れた。それでも楽しく読み進められたのは、千葉氏の学者らしからぬオープンなスタンスや引き出しの多さ、ある意味飛躍とも言える大胆なイメージの繋ぎ方のお陰だと思う。参考文献を読んでみたくなる良書。
読了日:01月17日 著者:千葉 雅也

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