2020年の読書メーター

2020年の読書メーター
読んだ本の数:49
読んだページ数:13023
ナイス数:765

経済学・哲学草稿 (光文社古典新訳文庫)経済学・哲学草稿 (光文社古典新訳文庫)感想
ヘーゲル専門家による翻訳。ファック私有財産、ビバ社会主義と叫ぶ若きマルクスの熱い思いが伝わってきたが、初マルクスなのでとにかくしんどかった。ヘーゲルについての言及は特に難解で、せめて経済学に的を絞ってくれよ、、と思った。
読了日:12月21日 著者:マルクス
夫のちんぽが入らない (講談社文庫)夫のちんぽが入らない (講談社文庫)感想
以前から読もうと思いつつ未読だったが、地上波ドラマ化の報せを機に一気読み。シリアスになりがちなテーマ(毒親、妊活、病気etc)だが、ユーモア混じりの突き放した文章で書かれることによりポップな作品に仕上がっている。人間臭さが溢れる夫婦の物語。
読了日:12月20日 著者:こだま
ある微笑 (新潮文庫)ある微笑 (新潮文庫)感想
サガン。ドロドロしがちなストーリーだが、登場人物の感情表現や気の利いたセリフが、当時のフランスのノンビリした風景と相まって独特な雰囲気を醸し出していた。こんなに「接吻」というワードが出てくる小説もなかなかないと思うが、物語にマッチしていたように思う。
読了日:12月19日 著者:フランソワーズ サガン
池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」池上彰の講義の時間 高校生からわかる「資本論」感想
入門書としての妥当性についてはさておき、少なくとも資本論に対する恐怖感を緩和してくれる作用はあると思う。随所に難解なマルクス節に対してのdisが入り、後半に進むにつれてエスカレートしていくところが面白い。著者のジャーナリスト的見解は不要と感じた。
読了日:12月12日 著者:池上 彰
葉隠入門 (新潮文庫)葉隠入門 (新潮文庫)感想
著者のバックボーンとも言える山本常朝『葉隠』のエッセンスを独自の視点で解釈・解説した一冊。時代や社会構造は違えども、武士が主君に仕える姿は現代の日本人に通じるモノがあると感じた。「どう生きるか」ではなく「どう死ぬか」を重視する発想が新鮮だった。現代語訳つき。
読了日:11月30日 著者:三島 由紀夫
カール・マルクス: 「資本主義」と闘った社会思想家 (ちくま新書)カール・マルクス: 「資本主義」と闘った社会思想家 (ちくま新書)感想
共産主義「ありき」ではなく、資本主義の成り立ちから問題点まで冷徹に分析し、変革を目指す「行動する思想家」としてのマルクス像を伝記的に描く。貪欲な研究により最後まで自らをアップデートし続けた姿が印象に残った。
読了日:11月26日 著者:佐々木 隆治
日本人養成講座日本人養成講座感想
日本および日本人に対する危機感をテーマとした論考の寄せ集め的な内容だが、この本を読んで何かしらピンときたミシマ初心者に、他の著書を手に取らせることを目的とした導入剤的な本だと思われる。意外と侮れない内容。自分もまんまと葉隠入門を買ってしまった。
読了日:11月24日 著者:三島由紀夫文学館
笑い (古典新訳文庫)笑い (古典新訳文庫)感想
岩波文庫の訳文に挫折して読んだところ、別の本かと思う程の分かり易さに感動。喜劇⇔他の芸術との比較により社会における笑いの作用を明らかにしている。「硬直性⇔しなやかさ」のくだりは『時間と自由』を過去にムリヤリ読んだことで理解が深まった気がする。
読了日:11月17日 著者:ベルクソン
「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫)「いき」の構造 他二篇 (岩波文庫)感想
青空文庫で一回読んだので再読。文化人類学者ではなく仏留学中の気鋭の哲学者が書いたという事に価値がある。国文学への造詣の深さは言うに及ばず、ベルクソン二元論の実践を東洋の哲学者がさらりとやってのけたことは「周造マジ半端ない」としか言いようがない。
読了日:11月07日 著者:九鬼 周造
プラトンとの哲学――対話篇をよむ (岩波新書)プラトンとの哲学――対話篇をよむ (岩波新書)感想
哲学者の思想解説だけではなく、今まさに「プラトンと」対話することで哲学に対しての理解を深めていく。取り上げている対話篇の掘り下げ具合がハンパないので自分の読み方の浅さに気づかせてくれる。物腰は柔らかいが芯の通った語り口で読者を導いてくれる良書。
読了日:10月31日 著者:納富 信留
サロメ (岩波文庫)サロメ (岩波文庫)感想
世紀末芸術つながりで読了。ビアズレーの挿絵のインパクトと福田恆存の古き良き訳文が相乗効果を産み出していた。平野啓一郎訳の光文社古典新訳文庫も流し読みしたが良くも悪くも「軽く」なってしまっている印象なので世紀末感を味わいたい方には福田訳をオススメしたい。
読了日:10月30日 著者:ワイルド
世紀末芸術世紀末芸術感想
19世紀末から20世紀初めにかけて印象派への反動としてヨーロッパで同時多発的に勃発した頽廃・装飾・神秘的な芸術の魅力について多角的に論じている。ゴーギャンナビ派ムンクなど、好きな画家の一筋縄ではいかない特質や意義が理解できたので興味深く読めた。
読了日:10月30日 著者:高階 秀爾
ヘーゲルとその時代 (岩波新書)ヘーゲルとその時代 (岩波新書)感想
クソ真面目かつ堅物感溢れる著者による、当時のヨーロッパ情勢とヘーゲル思想の関係性にフォーカスした新書らしからぬ密度の一冊。通読しただけで理解できる筈もなく、ヘーゲルが後世に与えた影響について言及した五章から読み始めるのも一つの手だと思う。
読了日:10月19日 著者:権左 武志
ヘーゲル 生きてゆく力としての弁証法 (シリーズ・哲学のエッセンス)ヘーゲル 生きてゆく力としての弁証法 (シリーズ・哲学のエッセンス)感想
弁証法解説の方向性が若干自己啓発じみている印象を受けるが、主要概念のみに的を絞っており、ヘーゲル入門書としてはまずまずの内容。シリーズ書籍(哲学のエッセンス)の宣伝や親バカっぷりを随所に挟みつつ、読者を優しくサポートしてくれる一冊。
読了日:10月16日 著者:栗原 隆
饗宴 (光文社古典新訳文庫)饗宴 (光文社古典新訳文庫)感想
ほろ酔いのおっさん達がエロスについて順番に喋るという、ユルめなシチュエーションの対話篇。ソクラテスも比較的リラックスモードで肩の力を抜いて読むことができたが、エロス云々よりも泥酔モードのアルキビアデスの片想い暴露話が一番インパクトが大きかった。
読了日:09月24日 著者:プラトン
パイドン――魂について (光文社古典新訳文庫)パイドン――魂について (光文社古典新訳文庫)感想
メノン、プロタゴラスソクラテスの弁明に続いて読み始めたが、三作とはうってかわって非常に難解。議論が深まっていくうちに突然現れるイデア論や自然科学論に激しく面喰らった。プラトンの真髄が詰まった一冊だがKindleに限界を感じたので紙本で読みたい。
読了日:09月20日 著者:プラトン
にんじん (岩波文庫)にんじん (岩波文庫)感想
ヴァロットンの挿し絵目当てで購入したが、初っ端からカルチャーショックを受けた。末っ子に対する風当たりの強さはどこの国でも共通らしい。「あだ名で呼ばれる屁理屈屋キャラ」としてはちびまる子を彷彿とさせる。無邪気な残虐性と家族の不思議さに満ちた稀有な一冊。
読了日:09月15日 著者:ルナアル
歴史とは何か (岩波新書)歴史とは何か (岩波新書)感想
新書のクセに難解で有名な青番、今回も例に漏れず手こずった。歴史の成り立ちおよび構成要素、歴史家に求められるスタンスについて謙虚な語り口で考察。歴史に限らず過去の現象を研究する上で必要なモノの見方について示唆に富む一冊。内容的に5章が見所だと思う。
読了日:09月02日 著者:E.H. カー
〈宗教化〉する現代思想 (光文社新書)〈宗教化〉する現代思想 (光文社新書)感想
新興宗教について若干特殊な経歴をもつ著者が「形而上学なめんな」というスタンスで古代ギリシャから思想史を辿りながら「盲信するな、疑え」と声高に主張する、怒りに満ちた一冊。気がついたらいつの間にか右翼・左翼の話になっていたが、なかなか面白かった。
読了日:08月27日 著者:仲正 昌樹
改訂新版 共同幻想論 (角川ソフィア文庫)改訂新版 共同幻想論 (角川ソフィア文庫)感想
100分で名著きっかけで読み始めた。〈幻想〉というオリジナル視点で日本の神話・民俗学を分析して国家や家族などの共同体における関係性のあり方について考察している。西欧思想の使いこなし具合も半端なく、在野研究でこれだけの幅と深さは明らかにヤバい。吉本隆明っぽい人って、現代では殆どいない気がする。
読了日:08月22日 著者:吉本 隆明
菊と刀 (光文社古典新訳文庫)菊と刀 (光文社古典新訳文庫)感想
戦後統治に向けての研究という実用的な目的を持った日本人論。全てを鵜呑みにはできないが、比較文化の手法で日本人の行動を詳細に分析しており、的を得ている部分は少なくない。日本の文化が欧米と「どのように」異なるのか、よく理解できる良書。
読了日:08月16日 著者:ルース ベネディクト
アリストテレス (1938年) (大教育家文庫〈第10〉)アリストテレス (1938年) (大教育家文庫〈第10〉)感想
"アリストテレス 哲学文庫"(三木清 著)にて読了。元々は3冊のアリストテレスについての著書を合体させた企画盤的な一冊、Kindleのこういった試みはありがたい。一番苦労したのがギリシャ語ちゃんぽんの文章で、読者が皆ギリシャ語分かる訳ないだろうが!とキレそうになりながら読んだ。https://a.co/2uMjn3y
読了日:07月30日 著者:三木 清
アリストテレス形而上学 (1935年) (大思想文庫〈第2〉)アリストテレス形而上学 (1935年) (大思想文庫〈第2〉)感想
"アリストテレス 哲学文庫"(三木清 著)にて読了。元々は3冊のアリストテレスについての著書を合体させた企画盤的な一冊、Kindleのこういった試みはありがたい。一番苦労したのがギリシャ語ちゃんぽんの文章で、読者が皆ギリシャ語分かる訳ないだろうが!とキレそうになりながら読んだ。https://a.co/2uMjn3y
読了日:07月30日 著者:三木 清
本はどう読むか (講談社現代新書)本はどう読むか (講談社現代新書)感想
本の種類別の読み方は勿論のこと、書籍とどのように付き合うか?についても詳しく書かれているが、後半に進むにつれて毒舌ぶりに磨きがかかり、積読せざるを得ない日本の出版業界の問題点やアンチスローリーディング、読書会批判など意外と刺激的な一冊。加藤周一の『読書術』などとは比べ物にならないくらい面白かったが、終章の某SF作品ネタバレは完全に蛇足だと思う。
読了日:07月11日 著者:清水 幾太郎
ソクラテスの弁明 (光文社古典新訳文庫)ソクラテスの弁明 (光文社古典新訳文庫)感想
メノン、プロタゴラスに続いて対話篇第三弾、挑発的な言動で告発に一人立ち向かい、死刑に怯むことなく「善く生きるとは何か」を問う。その姿にプラトンを始めとした弟子達が「オヤジの遺志は俺たちが受け継ぐぜ!」と決意を新たにしたのではないか。
読了日:07月06日 著者:プラトン
プロタゴラス―あるソフィストとの対話 (光文社古典新訳文庫)プロタゴラス―あるソフィストとの対話 (光文社古典新訳文庫)感想
対話篇第二弾。メノンと比べてソクラテスが若く、訳文がくだけた感じ。大御所ソフィストが力技でねじ伏せようとしてくるのに対して、弱点を狙ってネチネチ攻めるタイプのソクラテスは、敵に回したくない人間だと思う。注釈、解説共にとても分かりやすい。
読了日:07月03日 著者:プラトン
メノン―徳(アレテー)について (光文社古典新訳文庫)メノン―徳(アレテー)について (光文社古典新訳文庫)感想
プラトンの対話篇を読むのは初めてだが、論文調に比べて遥かに読みやすいのは勿論のこと、若気の至りで食ってかかるメノンをイヤらしい目で見つつ、時にブチ切れたりしながら真の理解へと青年を導くソクラテスの好々爺っぷりが伝わってきてとても面白かった。
読了日:07月01日 著者:プラトン
ハイデガー入門 (ちくま新書)ハイデガー入門 (ちくま新書)感想
表面的な『存在と時間』の読み方を「平仮名読み」と一喝するかと思えば「この章はちょっと難しかったよな?このポイントだけは押えとけよ」と急に優しくなるツンデレ著者によるハイデガー入門。プラトンアリストテレスギリシア哲学を学ぶ必要性を感じた。ハイデガーについては木田元氏の著作しか読んだことがなかったが、着目点が全くと言っていいほど異なるので新鮮だった。
読了日:06月27日 著者:細川 亮一
死刑 その哲学的考察 (ちくま新書)死刑 その哲学的考察 (ちくま新書)感想
カントの道徳論を経て得意技のフーコー権力論に持ち込み、ラストはデリダdisを挟んで18世紀イタリアの聞いたこともない哲学者が登場する。各概念の噛み砕き方は丁寧だが、想定内の範囲に結論が収まってしまった感あり。死刑賛成派の人の反応が気になる。
読了日:06月25日 著者:萱野 稔人
サルトル全集〈第29巻〉言葉 (1964年)サルトル全集〈第29巻〉言葉 (1964年)感想
いわゆる自伝的な自伝を想定して読むと肩透かしを食らう。特殊な家庭環境・地域で育った少年が、いかにしてノーベル文学賞を辞退するような人物になったのか。自分という存在を徹底的に他者的な視点で眺めている可愛げのない子供だが、書くことへの熱い想いは伝わる一冊。
読了日:06月18日 著者: 
読書について 他二篇 (岩波文庫)読書について 他二篇 (岩波文庫)感想
表題作を含む三つの論文から成るが「著作と文体」では当時のドイツ語の乱れについてとにかく激高しており、著者の血圧上昇が心配になる。表題作は「古典以外はマジクソ」としか言っていない。ドイツ語が分かったらもっと楽しめたであろう温度高めな一冊。
読了日:06月06日 著者:ショウペンハウエル
ガラスの街 (新潮文庫)ガラスの街 (新潮文庫)感想
村上春樹経由で名前は知っていたが、一冊通して読むのは初。シニカルな主人公に妙なこだわりがある感じは、ほぼ同世代の村上春樹っぽいと言えば言えなくもない。明確なオチがある訳でもなく好みは別れそうだが、個人的には好き。他の作品も読んでみたい。
読了日:05月30日 著者:ポール オースター
現代思想 2020年5月号 緊急特集=感染/パンデミック ―新型コロナウイルスから考える―現代思想 2020年5月号 緊急特集=感染/パンデミック ―新型コロナウイルスから考える―感想
医学だけがクローズアップされがちだが、政策や権力、現代思想、疫病の歴史、社会学など多種多様なジャンルの専門家による論考によって新型コロナが世界にもたらしたインパクトを浮き彫りにする永久保存版。モヤモヤを見事に言語化してくれる一冊。
読了日:05月27日 著者:G・アガンベン,S・ジジェク,J-L・ナンシー,有薗真代,飯島渉,奥野克巳
悲劇の誕生 (岩波文庫)悲劇の誕生 (岩波文庫)感想
ニーチェは順を追って読もうと思い手に取ったが、悲劇や神話の議論が延々と続くので何度も挫けそうになった。デビュー作の割にすごく偉そうな態度だが、痛烈なソクラテス批判はさすが反哲学のパイオニア、と感じた。ギリシア悲劇は有名どころだけでも読もうと思った。
読了日:05月21日 著者:ニーチェ
引き裂かれた自己: 狂気の現象学 (ちくま学芸文庫)引き裂かれた自己: 狂気の現象学 (ちくま学芸文庫)感想
統合失調症患者の主観に焦点をあてて、自己が分裂せざるを得ない状況に追い込まれていく過程を明らかにする。統合失調は自己防衛の本能であり、幼少期に自己⇔他者との関係性が正常に形成されないことに起因する可能性大。子育てする親は責任重大。
読了日:05月06日 著者:R.D. レイン
対話の哲学 ドイツ・ユダヤ思想の隠れた系譜 (講談社選書メチエ)対話の哲学 ドイツ・ユダヤ思想の隠れた系譜 (講談社選書メチエ)感想
「対話」という斬新な視点でユダヤ人思想家たちの議論を紐付けていく。まるで著者の授業を受けているような感覚になるので、未知のトピックにもかかわらず読みやすかった。言語から攻めるアプローチは興味深かったがユダヤ教との関連性については言及されず。
読了日:04月22日 著者:村岡 晋一
枯木灘 (河出文庫)枯木灘 (河出文庫)感想
100%方言の淡々とした会話、そして複雑極まりない家族構成で途中挫折しかけたが、ようやく物語が動き出した中盤以降は主人公の心情変化が何となく分かってきた。アタマではなくカラダで書いたようなフィジカルな文章は今まであまり読んだことがなかったので新鮮に感じた。混沌としたリズム感が肌に合うかどうかは意見が別れると思う。
読了日:04月11日 著者:中上 健次
破戒 (新潮文庫)破戒 (新潮文庫)感想
文学史で教わった作品ということで身構えて臨んだところ、思ったよりも堅苦しく感じなかったのは、キャラの立った脇役や信州方言のお陰だと思う。物語の大筋は既に割れている作品ではあるが、重層的な構造やクライマックスのエモさなど、やはり名作の名に値する作品なので、前半はダルくても放り出さずに頑張ると、かなりのカタルシスを得られると思う。
読了日:04月02日 著者:島崎 藤村
沈黙 (新潮文庫)沈黙 (新潮文庫)感想
四半世紀の積ん読を経て読了。布教を目的にポルトガルから来日した司祭の物語。異教徒弾圧、キリスト教が日本に根付くか否か、イエス・キリストへの信仰とは?という一筋縄ではいかないテーマに真っ向から対峙したヘビーな小説だが、読む者を引きずり込むパワーがある。結末が分かりづらかったのが惜しい。名作と言われる所以が分かった気がする。事前に『イエスの生涯』を読んでおくと、より楽しめると思う。
読了日:03月25日 著者:遠藤 周作
キリスト教の歴史 (講談社学術文庫)キリスト教の歴史 (講談社学術文庫)感想
聖書から現代に至るまでのキリスト教の主要概念を、各時代の思想家・哲学者の主義主張と絡めて解説しており、サラッとしているようで実はなかなか中身の濃い一冊。十九世紀あたりから急に難解になるので要注意。著者は教会の牧師でもあったようだが、一歩引いたスタンスでキリスト教を客観的に見ているように感じた。
読了日:03月22日 著者:小田垣 雅也
イエスの生涯 (新潮文庫)イエスの生涯 (新潮文庫)感想
神格化された存在ではなく一人の無力な人間としてのイエスを描いており、聖書から「真実」と「事実」を慎重に読み取りつつイエスの肖像に迫っている。時代に運命を翻弄される「悲しみの人」の姿が印象に残った。聖書入門書とも言える、初心者には打ってつけの一冊。
読了日:03月19日 著者:遠藤 周作
不安の概念 (岩波文庫)不安の概念 (岩波文庫)感想
「不安」とは何なのか、様々な角度から定義した上で「不安」との関わり方を模索する、というような内容だが、とにかく回りくどくて読み続けるのがしんどかった。教義学やヘーゲルを理解していないからかもしれないが『死に至る病』に挑戦する勇気は失せつつある。
読了日:03月08日 著者:キェルケゴール
父 岸田劉生 (中公文庫)父 岸田劉生 (中公文庫)感想
麗子像で有名な著者が記した岸田劉生の記録。芸術家、父親、それぞれの側面から画家の人間性が立体的に描かれている。画家の日記からの引用も多く、岸田劉生の真の生き様を知って欲しいという著者の思いが伝わってきた。後半は感情移入してしまうのでハンカチ必携。モディリアーニの娘(美術研究者)が書いた、モディリアーニの伝記を思い出した。
読了日:02月29日 著者:岸田 麗子
反哲学史 (講談社学術文庫)反哲学史 (講談社学術文庫)感想
紀元前から十九世紀に至るまでの哲学史を「存在」を軸にして解説しており、単なる伝記集に留まらない魅力を持った一冊。語り口が優しすぎて若干気持ち悪いが初心者にとっては最適。ニーチェの章が駆け足気味だった気がするが、全体的にコンパクトにまとまっている。
読了日:02月20日 著者:木田 元
哲学と反哲学 (岩波現代文庫)哲学と反哲学 (岩波現代文庫)感想
大別すると形而上学現象学の二つのジャンルの論文が収録されているが、いずれも応用編的内容であり、全くもって初心者向けではない一冊。ただ、ハイデガーによる形而上学の歴史の流れについては、ぼんやりとではあるがイメージできるようになった気がする。
読了日:02月13日 著者:木田 元
ベルクソン~人は過去の奴隷なのだろうか (シリーズ・哲学のエッセンス)ベルクソン~人は過去の奴隷なのだろうか (シリーズ・哲学のエッセンス)感想
ベルクソンの著書に出てくる理解困難な概念を具体例と共に噛み砕いた表現で解説してくれるとてもよくできた入門書。100ページ程度とコンパクトサイズだが、濃密な内容なので恐らくこの先何回も読み返すはず。もっと早く読んどけばよかった。
読了日:01月31日 著者:金森 修
完全な真空 (河出文庫)完全な真空 (河出文庫)感想
1971年発表、架空の書物の評論集という体裁。SFの枠に収まらないレムの縦横無尽な怪物っぷりが存分に堪能できる。2020年現在において内容が全く古びていないことが衝撃的。特に「ビーイング株式会社」は人間のあり方について漠然と不安を抱かせてくれる。
読了日:01月25日 著者:スタニスワフ・レム
メルロ=ポンティ・コレクション (ちくま学芸文庫)メルロ=ポンティ・コレクション (ちくま学芸文庫)感想
著書や講義録から抜粋した文章をテーマ別に集めたベストアルバム的内容なので、良く言えば幅広いが悪く言えばとっ散らかってる印象。メルロ=ポンティお得意の独特すぎる言い回しのせいで難解極まりないが唯一セザンヌのくだりはイメージできた気がする。
読了日:01月19日 著者:モーリス メルロ=ポンティ
闇屋になりそこねた哲学者 (ちくま文庫)闇屋になりそこねた哲学者 (ちくま文庫)感想
内容的には著者の自伝だが、現象学周辺の流れ・つながりについてのポイントを押さえた解説がとても参考になる一冊。人間的にはクセがありすぎるものの、研究者としてはマジ半端ない著者のような逸材はこの先我が国に現れるか否か、見通しは暗いと思う。
読了日:01月05日 著者:木田 元

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