2018年9月の読書メーター

9月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2468
ナイス数:40

誘拐の知らせ (ちくま文庫)誘拐の知らせ (ちくま文庫)感想
実際に起こった事件を元にしたノンフィクションの物語が、相変わらず淡々としたマルケス節で綴られている。安易な勧善懲悪のパターンに陥ることなく、さまざまな立場の人々の思惑が生々しいリアリティで描かれており、ジャンルは異なるものの「百年の孤独」に勝るとも劣らないクオリティだと思う。コロンビアという国に興味を持つきっかけとなったが、いかんせん登場人物が多すぎるので、序盤から人物メモを取っておくと読みやすくなる。
読了日:09月27日 著者:G・ガルシア=マルケス
屍者の帝国 (河出文庫)屍者の帝国 (河出文庫)感想
虐殺器官やハーモニーの世界観に「歴史物」という要素が加わりストーリーとしては楽しめるが、内容はやはり難解。伊藤氏お得意の「ポップなグロテスク」感は控え目だが、円城氏が得意とするシニカルなユーモアが全編に渡って効いている。意識についての大胆すぎる仮説がなかなか衝撃的だった。
読了日:09月22日 著者:伊藤 計劃,円城 塔
翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった (ポプラ文庫)翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった (ポプラ文庫)感想
自分がモームにハマるきっかけとなった「月と六ペンス」を翻訳されていて、どんな人なんだろうと思い読んでみた。翻訳する際の苦労話や、どんな作品に注目するか、などについて惜しげもなくベテランのノウハウを開示している。楽しみながら翻訳家の世界について知る事のできる作品。若干村上春樹を目の敵にしている感がある。
読了日:09月19日 著者:金原 瑞人
ぼくはスピーチをするために来たのではありませんぼくはスピーチをするために来たのではありません感想
マルケスが生前行った数々の講演が収録されており、題材は多岐に渡るので創作についての話はあまり多くないが、ジャーナリズムについて述べているものはとても興味深かった。これを言ったら身も蓋もないが、やはりマルケスは小説の方が面白いので、わざわざ買って読むほどではない気がする。
読了日:09月16日 著者:ガブリエル ガルシア=マルケス
百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)感想
今年読んだ中では現時点で最高の作品。会話文が少なく淡々とした文章で綴られる物語は、清濁併せ呑む壮大なスケールで進んでいくかと思いきや、時おり気の抜けたユーモアが顔を覗かせたり、妻から夫への愚痴が句点無しの2ページ強に渡る一文で表されたりする。とにかく登場人物の名前が厄介なことこの上ないので、終盤は半ばヤケクソ気味な状態で読み終えたが、小説に対する固定観念をものの見事に打ち砕いてくれる、稀に見る傑作だと思う。
読了日:09月15日 著者:ガブリエル ガルシア=マルケス
幸福な無名時代 (ちくま文庫)幸福な無名時代 (ちくま文庫)感想
短編集と勘違いして購入したところ、記者時代のルポルタージュを集めたものと判明。でも読んでみると語り口がマルケスの小説と殆ど変わりなかった。ノンフィクションなので比較的クセがなく読みやすかったので、マルケス一冊目に適していると思う。
読了日:09月07日 著者:G. ガルシア=マルケス
Frida KahloFrida Kahlo感想
テキスト量は少ないが伝記と年代ごとの作品が紐付けられており、フリーダの代表作が一通り追えるようになっている。英語もそれほど難しくないので、フリーダファンならコレクターアイテム的に持っておいて損は無いと思う。大きい作品が少なく、小さな絵が多かったフリーダらしい、可愛らしい本のサイズも良い。
読了日:09月05日 著者:Christopher Wynne
伝奇集 (岩波文庫)伝奇集 (岩波文庫)感想
夢のように現実離れした感触の作品は、どれも最低二回は通読しないと頭に入ってこない。物語にありがちな感傷性を極力排した「何かを超越した」世界だからだろうか。「円環」や「シンメトリー」といったボルヘスが大好きなモチーフが頻繁に用いられており、ラテンアメリカの土着性と、著者の博識っぷりとの唯一無二のハイブリッド感がボルヘスの魅力だと思う。
読了日:09月04日 著者:J.L. ボルヘス

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