2019年08月の読書メーター

8月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1333
ナイス数:34

哲学原理 (岩波文庫 青 613-3)哲学原理 (岩波文庫 青 613-3)感想
第一部は神の存在証明、思惟の定義など「懐疑屋デカルト」たる堂々の内容だが、第二部の途中「延長→運動」のあたりから雲行きが怪しくなり、終盤はほぼ流し読みだった。序文の「仏訳者への書簡」はなかなか侮れない内容。時代を感じさせる訳文(1964年発行)。
読了日:08月31日 著者:デカルト
ベルクソンの科学論 (1979年) (中公文庫)ベルクソンの科学論 (1979年) (中公文庫)感想
科学と哲学の関係がテーマのベルクソン入門書。中でも『物質と記憶』の解説が分かりやすい。中公文庫の『アンリ・ベルクソン』よりも堅めな内容で著者の主張が前面に出ている本ではないが、具体例を豊富に示してくれるので読者としては非常にありがたい。絶版になっているようだが勿体ないと思う。
読了日:08月23日 著者:沢瀉 久敬
方法序説 (岩波文庫)方法序説 (岩波文庫)感想
3部までは自己啓発っぽいが4部から本気を出している。なるほどだから「方法」序説なのねと納得がいった。壮大な物語の幕開け的な雰囲気を感じる一冊。正義感溢れるあまり歯に衣きせぬ毒舌家なデカルトのキャラクターが印象に残った。翻訳の程よいくだけ具合が良し。
読了日:08月20日 著者:デカルト
アンリ・ベルクソン (中公文庫)アンリ・ベルクソン (中公文庫)感想
「時間」「動き」「直観」などの要注意ワードを豊富な具体例(賀茂川漱石など)と共にかみくだかれた文章で解説してくれるのでベルクソン理解の参考になった。各章で解説している内容の重複が多々見られるが、読者的には覚えやすいという利点もあり。
読了日:08月14日 著者:沢瀉 久敬
アメリカ紀行アメリカ紀行感想
お気楽な旅行記かと思いきや、アメリカという異物に対して著者がどのような反応を示したかという一種の観察日記のような趣きがあった。滞在が終盤に近づくにつれて考察・分析・連想が徐々に鋭くなっていくが、唐突に間に挟まれる俳句(夏目漱石を意識?)が味わい深かった。
読了日:08月12日 著者:千葉 雅也
ブロディーの報告書 (白水Uブックス (53))ブロディーの報告書 (白水Uブックス (53))感想
ガウチョや学者、未亡人、宣教師などが登場する短編集。ラテンアメリカの乾いた空気の中で淡々と物語は進行していく。中でも衝撃的だったのは「マルコ福音書」「ブロディーの報告書」の二作。SFとは一味違った非日常感が味わえる。
読了日:08月04日 著者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス
女ごころ (ちくま文庫)女ごころ (ちくま文庫)感想
フィレンツェを舞台にした大人の恋愛モノだが、モームらしい発想は随所に見受けられるものの、スムーズに事が運びすぎる感があって全体的に惜しい印象が残った。短編や長編とは異なり、スパイスの効いた中編小説を作るのはなかなか難しいのかもしれない。
読了日:08月01日 著者:W・サマセット モーム

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2019年07月の読書メーター

7月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1332
ナイス数:32

社会的共通資本 (岩波新書)社会的共通資本 (岩波新書)感想
市場経済の原理に振り回されることなく、持続可能な社会・環境を作るためにはどうすればよいか、経済学の観点から論じられた一冊。19年前に出版された本だが、現在の日本の状況を予見して警鐘を鳴らしているように思われる。クルマ社会、学校教育のくだりが秀逸。‬
読了日:07月31日 著者:宇沢 弘文
灯台へ (岩波文庫)灯台へ (岩波文庫)感想
約400頁の長編だが、さほど長さを感じなかったのは「意識の流れ」の手法がくどすぎず、且つ「女性」や「芸術」などの要素が絶妙なバランスで物語を成り立たせていたからだと思う。今まで読んだウルフ作品の中では一番好み。「静けさ」が印象に残る作品。
読了日:07月28日 著者:ヴァージニア ウルフ
現象学 (岩波新書 青版 C-11)現象学 (岩波新書 青版 C-11)感想
1970年発行、初心者向けの入門書かと思いきや、新書とは思えないハードな内容。これ1冊で何かが分かったかというとほぼ何も分かってないに等しいので、次のステップの書物を読む必要がある。フッサールハイデガー、及びサルトルメルロ=ポンティの確執の描写は木田氏ならではだと思う。
読了日:07月18日 著者:木田 元
戦乱と民衆 (講談社現代新書)戦乱と民衆 (講談社現代新書)感想
一般市民と戦争についてのシンポジウムを元にした内容だが、感情的に語られがちな「戦争」というテーマについて、専門家が史実をもとに考察することは意義があると感じた。都市の文化的価値が終戦のタイミングを左右するという話も興味深かった。
読了日:07月11日 著者:磯田 道史,倉本 一宏,フレデリック・クレインス,呉座 勇一
キリスト教の歴史 (講談社学術文庫)キリスト教の歴史 (講談社学術文庫)感想
内容が堅そうで数年積んでいたが、読み始めると思ったより読みやすく、キリスト教と思想との関係について大まかな流れを把握することが出来た。歴史的事実の解説のみにとどまることなく、随所に著者の所感が顔を覗かせるところが人間味があって良い。
読了日:07月06日 著者:小田垣 雅也

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2019年06月の読書メーター

6月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:1643
ナイス数:27

素粒子 (ちくま文庫)素粒子 (ちくま文庫)感想
冴えないおっさんの変態日記と見せかけて、実は想像を絶するスケールの物語。神なき後の世界において究極の最適化へと突き進む描写はリアルすぎるあまりフィクションとは思えず。人類はいつまで性欲の奴隷のままなのか。伊藤計劃とか好きな人はハマるかもしれない。
読了日:06月26日 著者:ミシェル ウエルベック
道徳と宗教の二つの源泉〈1〉 (中公クラシックス)道徳と宗教の二つの源泉〈1〉 (中公クラシックス)
読了日:06月19日 著者:ベルクソン
道徳と宗教の二つの源泉〈2〉 (中公クラシックス)道徳と宗教の二つの源泉〈2〉 (中公クラシックス)感想
多角的なアプローチで宗教について論じられており、直観や持続などの単語は影を潜めているがラスト5ページの怒涛の展開はまさに圧巻。ベルクソンの器のデカさを見せつけてくれる。哲学という枠を超えて人間が向かうべき方向を分析した名著。
読了日:06月19日 著者:ベルクソン
大転落 (岩波文庫)大転落 (岩波文庫)感想
数々の理不尽な災難に見舞われた主人公の物語で、きっとパブリックスクールや学校教師、牧師や身分社会などに対する諷刺が込められてるんだろうけど知識不足のためあまり理解できず。個性豊かな脇役に比べて主人公のキャラがいまいち明確でなかったところが残念。
読了日:06月18日 著者:イーヴリン・ウォー
もたない男 (新潮文庫)もたない男 (新潮文庫)感想
ものを捨てることに異常なまでの執着を見せる著者(漫画家)の生きざまが淡々としたトーンで綴られている。物に依存したくないという思いが強すぎるあまり、何かを所有することに対して嫌悪感を持ってしまうのではないか。モノとの関係を考え直すきっかけになる一冊。
読了日:06月14日 著者:中崎 タツヤ
弱いつながり 検索ワードを探す旅弱いつながり 検索ワードを探す旅感想
環境を変えないと見えないもの、「観光」という考え方、検索ワード自体をどう探すか、ネットとの接し方、偶然性を楽しむ、などについて。自分の日常を振り返ると耳が痛い箇所も多々あり。サクッと読める割には示唆に富む良書。東氏の他の著作も読んでみたくなった。
読了日:06月05日 著者:東 浩紀

読書メーター

2019年05月の読書メーター

5月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:797
ナイス数:36

メイキング・オブ・勉強の哲学メイキング・オブ・勉強の哲学感想
「勉強の哲学」の発想から執筆までの経過を惜しげもなく披露しており「勉強の哲学」と必ずセットで読むべき。デジタルと併せて手書きノートを有効活用しているところが意外で,マネしたくなった。分析の徹底ぶりを見る限り、著者はドS且つドMだと思う。
読了日:05月15日 著者:千葉 雅也
思想と動くもの (岩波文庫)思想と動くもの (岩波文庫)感想
論文・講演を集めたもので「精神のエネルギー」よりも読み応えあり。直観についての考察に多くの頁が割かれており「時間と自由」の副読本的な内容。時おり文章中に表れる哲学探究へのパッションは、ベルクソンに対するイメージを大幅に変えてくれた。
読了日:05月18日 著者:ベルクソン
多読術 (ちくまプリマー新書)多読術 (ちくまプリマー新書)感想
読書術的な本は基本的に胡散臭いと思っているので軽い気持ちで読み始めたところ、なかなか奥深い内容で一気に読み終えた。本のポテンシャルを最大限に引き出す読み方はなるほどと思うところもあり「本が好きでしょうがないおっちゃん」感丸出しな語り口も楽しめたので、本好きな人は読んで損はないと思う。
読了日:05月22日 著者:松岡 正剛

読書メーター

2019年04月の読書メーター

4月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:718
ナイス数:24

ボルヘス怪奇譚集 (河出文庫)ボルヘス怪奇譚集 (河出文庫)感想
長くても3,4ページ、短いものは数行で終わってしまうボルヘスセレクションによる古今東西の物語が多数収録されている。教訓めいた話もあれば、何の脈絡もないまるで交通事故のような話もあり。一話一話が短いのでチビチビ読むのに適していると思う。
読了日:04月26日 著者: 
時間と自由 (岩波文庫)時間と自由 (岩波文庫)感想
三週間かけて読了。空間と時間を「持続」の概念を用いて緻密に定義している。特に「自由」についてのくだりは、十九世紀に書かれたにもかかわらず現代にも応用できると思う。ガチ理系ならではの分析力は若干しつこすぎるものの、他の哲学者とは一線を画している。
読了日:04月18日 著者:ベルクソン
これはペンです (新潮文庫)これはペンです (新潮文庫)感想
二篇の中篇作品が収録されており、表題作よりも「よい夜を持っている」が好みだった。無限の記憶という発想はボルヘスの幻想世界を彷彿とさせるが、人間臭さが究極まで排除された物語の中に微かに垣間見える叙情性が印象に残った。
読了日:04月03日 著者:円城 塔

読書メーター

2019年03月の読書メーター

3月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:792
ナイス数:19

精神のエネルギー (平凡社ライブラリー) 精神のエネルギー (平凡社ライブラリー)感想
物質と記憶は約一ヶ月を要したが、こちらは二週間弱で読み終えた。具体的事例にベルクソンの理論を紐付けているので、比較的ポップな仕上がりになっているのでオススメだが、後半「図式」や観念論・実在論等が出てくると理解が追い付かず。
読了日:03月28日 著者: アンリ ベルクソン
舞姫 (青空文庫POD) 舞姫 (青空文庫POD)感想
独特な文体ゆえに敬遠していたが、読み始めるとあまり気にならなくなった。自伝的な要素もあり主人公の葛藤のビシビシ伝わってくる。読者を容赦なく突き放す傑作。

読了日:03月15日 著者: 森 鴎外
物質と記憶 (ちくま学芸文庫) 物質と記憶 (ちくま学芸文庫)感想
通読に一ヶ月ちょっと要した。ガチの哲学かと思いきや、病理学や心理学などを巻き込んだ学際的な研究スタンスなので、逆に理系の専門家はこの本をどのように読むのか気になる。抽象概念を弄ぶのではなく人間の意識や行動に焦点が当てられている。難解だが傲慢さは感じられず、ひたすらクソ真面目なオッサンという印象。イメージ図がもっと豊富だと理解の助けになるので誰か作って欲しい。
読了日:03月07日 著者: アンリ ベルクソン

読書メーター

2019年01月の読書メーター

1月の読書メーター
読んだ本の数:2
読んだページ数:592
ナイス数:9

亡霊のジレンマ ―思弁的唯物論の展開―亡霊のジレンマ ―思弁的唯物論の展開―感想
現在二周目中。偶然性について書かれた「Ⅱ潜勢力と潜在性」は言わんとしていることが辛うじてぼんやり分かったが、他の章、特に最終章はほぼ理解不能。今日と地続きの明日が来る保障はどこにもなく、人間の勝手なご都合主義の矛盾を暴いていくさまが痛快だった。タイトル作の「Ⅲ亡霊のジレンマ」は前章の考え方を基に「神の不在」について議論されているが、亡霊というよりもむしろ神のほうにスポットが当てられているので、章のタイトルは原題(来るべき喪、来るべき神)のままで良かったのでは?と思ったりした。
読了日:01月31日 著者:カンタン・メイヤスー,千葉雅也
思弁的実在論と現代について: 千葉雅也対談集思弁的実在論と現代について: 千葉雅也対談集感想
対談集だが専門用語の嵐で骨が折れた。それでも楽しく読み進められたのは、千葉氏の学者らしからぬオープンなスタンスや引き出しの多さ、ある意味飛躍とも言える大胆なイメージの繋ぎ方のお陰だと思う。参考文献を読んでみたくなる良書。
読了日:01月17日 著者:千葉 雅也

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