2018年12月の読書メーター

12月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1310
ナイス数:45

へたも絵のうち (平凡社ライブラリー)へたも絵のうち (平凡社ライブラリー)感想
日経新聞の連載をまとめたもので、語り口調のため読みやすい。波瀾万丈すぎて唖然とするエピソードの数々は、さぞかし日経の紙面で浮いていたと思われる。読み終わった後、国立近代美術館で開催されていた熊谷守一展に行けなかったことを激しく後悔した一冊。
読了日:12月22日 著者:熊谷 守一
暇と退屈の倫理学暇と退屈の倫理学感想
暇と退屈というテーマを突き詰めていった結果、到達した着地点はかなり想定外なものだったが、読み終えた直後は時空を超えた旅行を経てきたような感覚になった。難解な理論を具体例と共に丹念に検証しているので、ギブアップせずに無事ゴールできた。
読了日:12月21日 著者:國分 功一郎
別のしかたで:ツイッター哲学別のしかたで:ツイッター哲学感想
140字で世界を切り取る手腕は鮮やかすぎて、芸術の域に達していると言っても過言ではないと思う。言葉に対する神経の使い方・執着が尋常ではない印象。理解が難しいものも多いが、何気ない思考のダダ漏れ感がとても楽しめるのでオススメ。
読了日:12月17日 著者:千葉 雅也
リタ・ヘイワースの背信リタ・ヘイワースの背信感想
それぞれの章が丸々登場人物の独白(改行なし)で占められており、とにかく読みにくい上に人物相関も分かりづらい。終盤で漸く小説らしい箇所が現れたものの結局謎に包まれたまま終了。プイグのデビュー作を読んでみたいというマニア以外にはオススメできない一冊。
読了日:12月11日 著者:マヌエル プイグ
継母礼讃 (中公文庫)継母礼讃 (中公文庫)感想
単なる官能小説かと思いきや、意外な展開が待っていた。描写する場面とそうでない場面の線引きが鮮やかで、敢えてすべてを描かず、読者に想像させる手腕が見事だと思った。サラッと書かれたようで、実は侮れない作品。
読了日:12月01日 著者:マリオ・バルガス=リョサ

読書メーター

2018年11月の読書メーター

11月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:2231
ナイス数:63

ラテンアメリカ五人集 (集英社文庫)ラテンアメリカ五人集 (集英社文庫)感想
バルガスリョサ、オクタビオパス、フエンテスなどの作品を含むコンピレーションアルバム的な作品集。中でもバルガスリョサの「子犬たち」の笑うに笑えなさが一番面白かったが、「ち○こ」というワードがあれほど頻出する短篇小説は初めて読んだ。
読了日:11月29日 著者:ホセ・エミリオ パチェーコ,カルロス フエンテス,オクタビオ パス,ミゲル・アンヘル アストゥリアス,マリオ バルガス=リョサ
青白い炎 (岩波文庫)青白い炎 (岩波文庫)感想
約150頁の詩(左頁に英文、右頁に対訳)と約370頁の註釈というパンチの効いた目次から始まる、厚さにして二センチあまりの文庫本。英語の詩を読むのは初めてだったが訳分からないなりに語感の美しさが伝わった気がする。富士川義之氏の対訳は、あまり意訳せずに原文の雰囲気を尊重していた印象。破天荒な構成と分厚さに怖じ気づくことなく、覚悟を決めて思いっきり飛び込んでしまえば意外と楽しめると思う。
読了日:11月24日 著者:ナボコフ
松浦弥太郎の「ハロー、ボンジュール、ニーハオ」松浦弥太郎の「ハロー、ボンジュール、ニーハオ」感想
暮らしの手帖編集長時代の著書。アメリカ、フランス、中国の国民性や考え方の紹介が中心で、終始ポジティブかつアクティブなパワーに溢れているので、そういうタイプではない人にはしんどいと思う。米仏中での経験を現在の仕事にどう反映させているか、についてもっとページを割いて欲しかったが、それは他の著書をご覧ください、ということだろうか。
読了日:11月15日 著者:松浦弥太郎
緑の家(上) (岩波文庫)緑の家(上) (岩波文庫)感想
とりあえず上巻を読み終えたが、物語がこの先どう展開していくのか、未だに予測できない。このままボンヤリ終わってしまったらどうしよう、という一抹の不安を抱きつつ下巻に進む。
読了日:11月10日 著者:M.バルガス=リョサ
秘密の武器 (岩波文庫)秘密の武器 (岩波文庫)感想
コルタサル「秘密の武器(岩波文庫)」読了。短篇5篇中2篇は他の短篇集で既読。人間の情念と日常を逸脱した超現実感のミックス具合がコルタサルの魅力だと思うが、本作収録の短篇では人間の情念、とりわけ不在者に対する情念の描写が印象的。「女中勤め」はあまりコルタサルっぽくない短篇で意外だった。
読了日:11月06日 著者:コルタサル
蜘蛛女のキス (集英社文庫)蜘蛛女のキス (集英社文庫)感想
読んでいて人と人が愛を育むことの尊さがグサグサ刺さったが、若干特殊な環境下であることは否めない。プイグ作品はブエノスアイレス事件、赤い唇を読んだが、本作が一番良かった。プイグ特有の文章構成が物語に見事にハマっていた気がする。どんな人物をモリーナに当て嵌めて読み進めるかが重要なポイントだと思う。
読了日:11月05日 著者:マヌエル・プイグ

読書メーター

2018年10月の読書メーター

10月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2318
ナイス数:42

赤い唇 (集英社文庫)赤い唇 (集英社文庫)感想
最初から最後までとにかくドロドロしている。複数の男女の思惑が交錯する「アルゼンチン版昼ドラ」的な内容だが、身分、都会と田舎、不治の病、信仰などの要素に加えて、プイグが得意とする変則的な文章構成が物語に奥行を持たせている。マルケスの「予告された殺人の記録」を読んだときの救いの無さを思い出した。
読了日:10月30日 著者:プイグ
ブエノスアイレス事件 (白水Uブックス (63))ブエノスアイレス事件 (白水Uブックス (63))感想
小説っぽくない独特な構成とドロドロした性表現が特徴的だが、その先にあるのは愛や希望ではなく、病的で歪んだ欲望がアルゼンチンを舞台としたキャンバスにこれでもかとばかりに叩きつけられている印象。冗長な部分も殆どなく、なかなか面白かったが、ベストセラーになるほど万人受けするとはとても思えない。
読了日:10月25日 著者:マヌエル・プイグ
会話もメールも 英語は3語で伝わります会話もメールも 英語は3語で伝わります感想
「3語」というのは実際に単語が三つしかない訳ではなく、文の中の要素が三つという意味なので若干誇大広告気味な感じは否めないが、全体を通して趣旨はまともだし、英語をコミュニケーションの道具として使いこなしたいのであれば、TOEICの勉強をするより、この本の内容を徹底的にマスターした方が良いのではないか。斬新な切り口の良書だと思う。
読了日:10月23日 著者:中山 裕木子
フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 (岩波文庫)フエンテス短篇集 アウラ・純な魂 他四篇 (岩波文庫)感想
最近個人的にラテンアメリカ文学がアツいので初フエンテスに挑んでみたところ、ボルヘス直系の不気味さ、生と死が地続きなフアンルルフォ、ガルシア=マルケス感があった。ただコルタサルっぽい主観性はあまり感じられず、第三者的な客観的視点に徹しているように思えた。
読了日:10月18日 著者:カルロス フエンテス
奪われた家/天国の扉 (光文社古典新訳文庫)奪われた家/天国の扉 (光文社古典新訳文庫)感想
『訳分からないけどクセになる』コルタサルの魅力が詰まっているが「キルケ」はトラウマになりかねないインパクト。マンクスピアとは何なのか気になってしまい、ついついググってしまった。コルタサルの未訳の作品はまだまだあると思うので、寺尾隆吉さんにはこれからも是非頑張ってもらいたい。
読了日:10月14日 著者:フリオ コルタサル
八面体 (フィクションのエル・ドラード)八面体 (フィクションのエル・ドラード)感想
短編は長編と違って、その作品を読んだことでしか感じられない或る特別な感情を味わうことのできる表現形式だと思うが、そういった意味においてコルタサルは短編職人だな、と感じた。読者を作品ごとに様々な感情の迷路に容赦なく突き落としてくれる迷作。
読了日:10月12日 著者:フリオ コルタサル
十二の遍歴の物語 (新潮・現代世界の文学)十二の遍歴の物語 (新潮・現代世界の文学)感想
ヨーロッパを舞台にした短篇が多いせいか、幻想的リアリズム感は控えめ(ゼロではない)で、日常の延長を題材にしたライトな作品が多い印象。文体はいつものマルケス節だが、他の作品に比べて気軽に楽しめるものが多かったように思う。
読了日:10月09日 著者:G.ガルシア マルケス
悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫)悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫)感想
世にも奇妙な物語テイストの作品が多いが、その中でも比較的サイズ長めの「追い求める男」がとにかくヤバかった。月と六ペンスを彷彿とさせる、ジャズミュージシャンの生きざまを描く傑作をラテンアメリカの作家が書いていたとは全く知らなかった。
読了日:10月05日 著者:コルタサル
遊戯の終わり (岩波文庫)遊戯の終わり (岩波文庫)感想
「結局謎が明かされないミステリ」的な短篇の数々は割とサクッと読めるが、再読すると味わいが深まるスルメ感あり。全てを語らず、余白部分を読者の想像に委ねているような印象。「牡牛」や「昼食のあと」「遊戯の終わり」といった作品が好みだった。
読了日:10月02日 著者:コルタサル

読書メーター

2018年9月の読書メーター

9月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2468
ナイス数:40

誘拐の知らせ (ちくま文庫)誘拐の知らせ (ちくま文庫)感想
実際に起こった事件を元にしたノンフィクションの物語が、相変わらず淡々としたマルケス節で綴られている。安易な勧善懲悪のパターンに陥ることなく、さまざまな立場の人々の思惑が生々しいリアリティで描かれており、ジャンルは異なるものの「百年の孤独」に勝るとも劣らないクオリティだと思う。コロンビアという国に興味を持つきっかけとなったが、いかんせん登場人物が多すぎるので、序盤から人物メモを取っておくと読みやすくなる。
読了日:09月27日 著者:G・ガルシア=マルケス
屍者の帝国 (河出文庫)屍者の帝国 (河出文庫)感想
虐殺器官やハーモニーの世界観に「歴史物」という要素が加わりストーリーとしては楽しめるが、内容はやはり難解。伊藤氏お得意の「ポップなグロテスク」感は控え目だが、円城氏が得意とするシニカルなユーモアが全編に渡って効いている。意識についての大胆すぎる仮説がなかなか衝撃的だった。
読了日:09月22日 著者:伊藤 計劃,円城 塔
翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった (ポプラ文庫)翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった (ポプラ文庫)感想
自分がモームにハマるきっかけとなった「月と六ペンス」を翻訳されていて、どんな人なんだろうと思い読んでみた。翻訳する際の苦労話や、どんな作品に注目するか、などについて惜しげもなくベテランのノウハウを開示している。楽しみながら翻訳家の世界について知る事のできる作品。若干村上春樹を目の敵にしている感がある。
読了日:09月19日 著者:金原 瑞人
ぼくはスピーチをするために来たのではありませんぼくはスピーチをするために来たのではありません感想
マルケスが生前行った数々の講演が収録されており、題材は多岐に渡るので創作についての話はあまり多くないが、ジャーナリズムについて述べているものはとても興味深かった。これを言ったら身も蓋もないが、やはりマルケスは小説の方が面白いので、わざわざ買って読むほどではない気がする。
読了日:09月16日 著者:ガブリエル ガルシア=マルケス
百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)百年の孤独 (Obra de Garc´ia M´arquez)感想
今年読んだ中では現時点で最高の作品。会話文が少なく淡々とした文章で綴られる物語は、清濁併せ呑む壮大なスケールで進んでいくかと思いきや、時おり気の抜けたユーモアが顔を覗かせたり、妻から夫への愚痴が句点無しの2ページ強に渡る一文で表されたりする。とにかく登場人物の名前が厄介なことこの上ないので、終盤は半ばヤケクソ気味な状態で読み終えたが、小説に対する固定観念をものの見事に打ち砕いてくれる、稀に見る傑作だと思う。
読了日:09月15日 著者:ガブリエル ガルシア=マルケス
幸福な無名時代 (ちくま文庫)幸福な無名時代 (ちくま文庫)感想
短編集と勘違いして購入したところ、記者時代のルポルタージュを集めたものと判明。でも読んでみると語り口がマルケスの小説と殆ど変わりなかった。ノンフィクションなので比較的クセがなく読みやすかったので、マルケス一冊目に適していると思う。
読了日:09月07日 著者:G. ガルシア=マルケス
Frida KahloFrida Kahlo感想
テキスト量は少ないが伝記と年代ごとの作品が紐付けられており、フリーダの代表作が一通り追えるようになっている。英語もそれほど難しくないので、フリーダファンならコレクターアイテム的に持っておいて損は無いと思う。大きい作品が少なく、小さな絵が多かったフリーダらしい、可愛らしい本のサイズも良い。
読了日:09月05日 著者:Christopher Wynne
伝奇集 (岩波文庫)伝奇集 (岩波文庫)感想
夢のように現実離れした感触の作品は、どれも最低二回は通読しないと頭に入ってこない。物語にありがちな感傷性を極力排した「何かを超越した」世界だからだろうか。「円環」や「シンメトリー」といったボルヘスが大好きなモチーフが頻繁に用いられており、ラテンアメリカの土着性と、著者の博識っぷりとの唯一無二のハイブリッド感がボルヘスの魅力だと思う。
読了日:09月04日 著者:J.L. ボルヘス

読書メーター

2018年8月の読書メーター

8月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:2056
ナイス数:14

かみそりの刃〈下〉 (ちくま文庫―モーム・コレクション)かみそりの刃〈下〉 (ちくま文庫―モーム・コレクション)感想
ストーリーよりも個性豊かな登場人物の描写に重きが置かれている印象。戦争、宗教、インド神秘主義などの要素がこれでもかとばかりに詰め込まれており、スケールの割に全体のまとまりに欠ける感が否めなかった。ただ主人公や周りの人物の描写についてはとにかく鬼気迫るほどのリアリティで、さすがモームと言わざるを得ない。
読了日:08月31日 著者:サマセット モーム
かみそりの刃〈上〉 (ちくま文庫―モーム・コレクション)かみそりの刃〈上〉 (ちくま文庫―モーム・コレクション)感想
女性の人物描写に定評のあるモームだが、本作では男性主人公の描き方が光っており、過剰になってしまいがちな人物造形が絶妙なバランスを保っている印象。小説らしい小説は久しぶりなので、とても楽しんで読んでいる。下巻は果たしてどうなるのか。
読了日:08月25日 著者:サマセット モーム
鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)感想
想定外の落語調訳文に初めは面喰らったが、ゴーゴリに対する深い理解や愛が無いとここまで大胆な翻訳は出来ないと思うし、どの作品も単純に楽しく読めたので結果オーライだと思う。落語と相通じるものがあるということは、ロシアとか日本とか国境を越えた面白さが伝わった事になるし、外国文学に対するハードルも下がると思うので、今後もこういった試みは個人的にはウェルカムである。
読了日:08月13日 著者:ゴーゴリ
魯迅文集〈1〉 (ちくま文庫)魯迅文集〈1〉 (ちくま文庫)感想
「吶喊」と「彷徨」魯迅の小説集×2が1冊にまとめられている。吶喊に比べて彷徨の作品の方がユーモアを含んだ作品(ex高先生)もあれば、とことんヘビーな作品(傷逝)もあるので間口が広く、多彩なった。都市生活者を題材にしたものが若干増えたかも。ただどんな作品にせよ魯迅は徹底して突き放したスタンスで描くので、読者の感情が多少揺れたとしても「そんなことより、お前今の社会で本当にいいのか」と怒られそうな気がする。
読了日:08月07日 著者:魯迅
阿Q正伝・藤野先生 (講談社文芸文庫)阿Q正伝・藤野先生 (講談社文芸文庫)感想
「吶喊」「彷徨」「朝花夕拾」からチョイスされたベストアルバム的な1冊。「吶喊」は訳者は異なるが既に岩波文庫版で読んでいたので「彷徨」からの4篇と藤野先生を読んだ。魯迅の短篇はだいたい読んでてしんどくなるのだが、中でも「孤独者」のボディブローのような感触が一番キツかった。読んでいて感じるしんどさ、キツさこそが魯迅を理解する手がかりになると思うが、今のところはただしんどいだけである。「藤野先生」は先生のどの性質が魯迅の心に引っ掛かったのかよく分からず。
読了日:08月06日 著者:魯迅
魯迅 (講談社文芸文庫)魯迅 (講談社文芸文庫)感想
「吶喊」「野草」を経て読んでみた結果、主題の魯迅よりも竹内氏の無骨な人間臭さに魅了されてしまった。文学者としての魯迅のスタンスは一筋縄ではいかない捻くれ具合だが、竹内氏は「日本とアジア」同様、寄り道しまくった挙げ句当たって砕ける感じの展開で全く飽きない。とにかく魯迅の書いてる事を真に受けてはいけない、という事だけは分かった。
読了日:08月03日 著者:竹内 好

読書メーター

「エル・アレフ」ボルヘス

◼不死の人
オデュッセイア』『イーリアスホメーロス
古代ギリシア


◼死んだ男
ガウチ


神学者
ヨハネス↔アウレリアヌス
ヒストリオン派
異端
円環派論駁


◼戦士と拉致された女の物語
自分が攻撃していた町を守ろうとして亡くなった男
↔イギリスからブエノスアイレスにやってきて酋長の妻になった女


◼タデオ・イシドロ・クルスの伝記
かつて殺人を犯して警官と戦ったクルスが、今度は自分が警官となって無法者を追う
→自分は荷担できないと悟り、部下を相手に戦い始める


◼エンマ・ツンツ
父の仇を討つ


◼アステリオーンの家
ミノタウロス


◼もうひとつの死
ドンペドロダミアンの2つの死に方


◼ドイツ鎮魂歌
ナチズム、収容所副所長の独白
暴力vsキリスト教


アヴェロエスの探求
スペイン
イスラム
悲劇と喜劇
アヴェロエスの消滅(アヴェロエス=自分の象徴)


◼ザーヒル
インド
テオデリーナ・ビリャールの死
貨幣にとりつかれた


◼紙の書き残された言葉
神官ツイナカーン
牢に幽閉
拷問
ジャガーの模様=神の言葉
砂に溺れる夢
神、宇宙と合一


◼アベンハカン・エル・ボハリー、自らの迷宮に死す
ダンレイヴン(叙事詩)
アンウィン(数学者)
いとこのサイードに殺される
フェイスレス(顔を潰す)
蜘蛛の巣
最終的にアベンハカンになる


◼二人の王と二つの迷宮
★だいたい夢に出てきたらイヤな感じの話が多い


◼待つ
ヴィラーリ(敵の名前)
居場所を突き止められる


◼戸口の男
インド
グレンケアン(イスラム教徒の騒乱を鎮静化させるため送り込まれたタフな男)
失踪→捜索
年取ったぼろきれのような男の話
裁判官を裁く裁判官→狂人
発見


◼エル・アレフ
ベアトリス・ビテルボの死
カルロス・アルヘンティーノ・ダネリ
→詩集の序文をアルバロ・メリアン・ラフィヌールに書いて欲しいと頼まれる
※エル・アレフ=全ての点を含んでいる空間上の一点


★古代の史実に基づいたであろう話もあれば、南米ならではの民族的昔ばなしもあり

言葉とは何か 丸山圭三郎

1.言葉は事物の名称リストではない(ソシュール)
外国語を学ぶ
→分析やカテゴリー化の新しい視点を獲得する
外観は似ているが大きく意味が異なる(ex英語↔仏語)
-単語
-構文
★現実を見る眼鏡が言語によってかなり異なる

シニフィアン「意味するもの」
シニフィエ「意味されるもの」
唯言論


ホモ・ファーベル(道具を作るヒト)
ホモ・サピエンス(知恵のヒト)
★ホモ・ロクエンス(言葉をもつヒト)

言葉→生理器官の本能的使用とは本質的に異なる
(狼に育てられた少女、チンパンジーに言語を教える→いずれもNG)

言語起源のテーマはタブー(あまりにも大きな問題)

言霊思想(古代人の言語観、神話的思考)

◼言語省察の歴史

第一期
言葉→思弁の対象(形而上学、哲学)

第二期
サンスクリットの発見
科学としてのステータス(比較文法、歴史言語学)

第三期
ソシュール以後、コペルニクス的転回

プラトン『クラテュロス』(名の正しさについて)
二つの学派が対立
1.名称と事物との間に自然な関係がある(クラテュロス)
2.事物の命名は恣意的なものに過ぎない(デモクリトス)

17,18c
ポール・ロワイヤル文法(一般・理性文法)
ランスロー、アルノー
「言葉は思考の反映である」

19c
科学的経験主義
ボップ 言葉の誕生と発展を観察する
シュライヒャー、パウル 自然科学に近づける

→人間学的視点の不在
哲学的思弁から科学的観察の対象へ
ソシュール「科学的という表現が意味するものは何か」

ソシュール
▼ランガージュ
言語、抽象化、象徴、カテゴリー化などの能力
普遍性
潜在的能力

▼ラング
多種多様な国語体
特殊・個別性
顕在的社会制度
一種の暗号表に例えられるが、誤解されがち

▼▼パロール
特定の話し手によって発せられた具体的音声の連続

★既成のラングに個人が拘束される
(人間が自ら作り出したものによって逆に支配される)

▼「体系」
全体があってはじめて個が存在する
全体との関連と他の要素との相互関係のなかで、はじめて個の意味が生ずる

▼▼連辞関係
各要素が特定の連辞のなかで、その前後におかれた要素との相互関係において価値を生ずる(顕在的関係)

▼▼連合関係
実際は発話されなかったが語る主体の選択次第で、いつでも代わって用いられる可能性のある同系列の要素の関係(潜在的関係)

・共時言語学
→ある一定時期のラングの記述
・通時言語学
→時代とともに変化するラングの記述

「時代のある移り変わるさまざまな段階で、まず共時的断面に目を据え、その俯瞰図と俯瞰図を比較することによって体系総体の変化をたどるのが通時的研究である」

▼共時態
▼通時態

言葉以前の現実→混沌とした連続体
→自国語の意味体系のお陰で、適当な箇所に境界線を画すことができる

「言葉に依存しない概念も事物もない」
「事物を作り出すのは視点である」

メルロ=ポンティ
「言葉は認識の後にくるのではなく、認識自体である」

相互的差異化活動こそ言葉の働きである

指向対象
×言葉以前から存在する分節された実体
○言葉の誕生とともに生まれる「関係付けられたモノ」

「言語に先立つ観念はなく、言語が現れる以前は、何一つ明瞭に識別されない」

▼言語記号(シーニュ)
▼▼シニフィアン「意味するもの」
▼▼シニフィエ「意味されるもの」

▼記号素(モネーム)→これ以上は区切れないシーニュの最小の単位
▼▼語彙素→語彙的意味
▼▼形態素→機能的意味

音素(フォネーム)→シニフィアンの最小単位

★驚くべき経済性(無駄のなさ)

シニフィエシニフィアン間の無動機性

★原理的にはいかに恣意的なものでも、今ここにでき上がってしまったものとして存在する言語は、必然的なものとして私たち一人ひとりを規制する

★言語の本質的機能→その信号性にある

★言語→海辺の砂地の上に広げられた網のようなもの

「もともと単位という客観的実体は存在しない(その体系の中では、個々の単位の大きさとか価値はネガティブにした定義されない)」

「意味」
-signification
そのシニフィエ
-sens
抽象的なシニフィエが特定のコンテクストにおいて獲得する具体的意味

-外示的意味、デノテーション
語のもつ最大公約数的、抽象的意味
ラングに属する意味(signification)

-共示的意味、コノテーション
語のもつ個人的、状況的意味(sens)
三つの種類
1.一言語内の個々の語に宿る個人的・情感的イメージ
→ラング化されていないパロール次元
2.一定時期のラングに見出される共同主観的付随概念
ユダヤ人はユダヤ人さ」
★3.
→日常の言語状況にあって既成の意味体系、既成のシンタックスのなかに閉じ込められていく人間の意識を、言葉の本質的表現作用を通して解放する主体的な試み
(言表、言述、テクスト)
「既成のものによって作られた、かつて存在しない関係」の樹立
→主体が真の表現行為を行いさえすれば、必ずや言葉の創造的活動が見出だされる
ex)詩

※1,2は日常の言語の次元だが、3はより高次の言語に属する